オーディオの理論解説では、周波数特性はフラット(平坦)
であるべきという考え方が「正義」と見なされがちです。
CDプレーヤーやアンプといった電気信号を扱う機器では、
信号の忠実な伝送のためにフラット特性は当然求められます。
しかし、オーディオ機器の中で最も特性が悪いとされるスピーカーにおいては、
この「フラット至上主義」の原則が通用しない現実があります。
スピーカーの性能と理論値との乖離
市販されているスピーカー製品で、可聴帯域全体(20 Hz〜20 kHz)を
市販されているスピーカー製品で、可聴帯域全体(20 Hz〜20 kHz)を
完全にフラットな特性で再生できるものは、残念ながら存在しません。
スピーカーの特性には、以下のような多くの「悪影響」が含まれます。
周波数特性の凹凸: 再生帯域全体で音圧レベルにムラが生じる。
位相回転: 周波数によって音の波のタイミングがズレる。
指向性: 周波数によって音の広がり方が変わる(高域ほど狭くなる)。
歪み: 特に小型スピーカーの低域歪みは著しい。
部屋の音響がもたらす問題
さらに、スピーカーは空間に音を放出するため、部屋の音響特性の影響を避けられません。
一般的な部屋で音を出す場合、**定在波(特定の周波数が強調・打ち消し合う現象)**などの影響により、
リスニングポイントで正確な周波数特性を得ることは非常に困難です。
理論を解説する方が使用されている機材が、
必ずしも音響対策された部屋や高性能なスピーカーではない場合、
彼らの再生環境が理想的なフラット特性とはかけ離れている可能性も考えられます。
公開されているスピーカー特性の限界
スピーカーのカタログなどで公開されている特性(dB/2.83V/m、などの感度や周波数特性)は、
スピーカーのカタログなどで公開されている特性(dB/2.83V/m、などの感度や周波数特性)は、
無響室という特殊な環境で、主にツイーターの軸上1 mの距離で測定されたものです。
これは、あくまでスピーカー単体のポテンシャルを示す数値であり、
実際のリスニング環境やリスニングポイントでの特性とは異なります。
リスニングポイント(1 m以上離れた場所)では、
高域は空気による減衰の影響をより受けやすく、部屋の反射音が高域の減衰を補完しても、
結果として高域だら下がりの特性になりがちです。
また、定在波や反射音によって全体の特性は大きく乱れます。
補正を試みた際の聴感の変化
実際にリスニングポイントで、高域と低域の落ち込みを補正し、
実際にリスニングポイントで、高域と低域の落ち込みを補正し、
中音域と同じレベルに合わせた場合、以下のような聴感の変化が確認されました。
高域を補正した場合:
過大なエフェクト処理がされていない音源は、解像度が高く澄んだ音に聞こえます。
メリハリを強調した音源や過剰なエフェクト処理がされた音源は、厳しく耳障りな音に聞こえがちです。
低域を補正した場合:
近年のデジタル音源、CD音源には、小型スピーカーでの再生時に低域不足を感じさせないよう、
100 Hz以下で低域を増量するエフェクト(マスタリング)が施されていることが多いです。
スピーカーの特性(概ね100 Hz以下から減衰する)に合わせて聴くと適度な量感に聞こえますが、
もしスピーカーの低域特性を20 Hzまでフラットに補正してしまうと、
音源側の低域増量エフェクトと相まって、過剰で聴くに堪えない低音になってしまいました。
結論:フラット特性は手段であり目的ではない
「原音再生」の定義が「ソフト化された音に忠実な再生」であるならば、
「原音再生」の定義が「ソフト化された音に忠実な再生」であるならば、
CDなどの市販音源に施されたエフェクトも含めて再生するのが基本です。
しかし、現実のスピーカーでフラット補正を試みた結果、
特に低域増量エフェクトが施された音源は、かえって不自然な音になってしまいました。
この体験から、以下の結論に至ります。
スピーカー以外の機器は、可能な限りフラットかつ低歪みの特性であることが望ましい。
スピーカーは基本的に特性が悪い上に、部屋の影響を大きく受ける。
したがって、最終的なオーディオセッティングは、
理論上のフラット特性を追求するよりも、自分の感覚で最も「聴きやすい音」に調整
セッティングするのが最も良い方法と言える。
高性能イヤフォンによる結論の裏付けと新たな課題
高性能・フラット特性のイヤフォンでの試聴結果は、
スピーカーセッティングの考察をさらに補強しています。
Youtubeで話題の超低歪みでフラットなカナル型イヤフォンを入手して試聴
![IMG_3883[1].jpg](https://soundjulia.up.seesaa.net/image/IMG_38835B15D.jpg)
CDプレーヤーからの音の出力を加工することなく写真のイヤフォンで試聴します。
1. 「低域過剰バフバフ音源」の検証結果
写真の高性能フラットイヤフォンでの試聴:
低域が過剰にブーストされた音源
(現代の小型スピーカー再生に合わせてマスタリングされた音源など)は、
このイヤフォンで聴いてもそのまま「バフバフ」とした過剰な低音として再生された。
この結果は、「低域過剰」なのは音源(ソフト)側に原因があり、
高性能な再生機器(フラット特性イヤフォン)はそれに忠実に、歪みなく再生したことを示した。
他のヘッドフォン・イヤフォンでの試聴:
他の製品で聴くと、低域が過剰に感じられず「丁度良い」音に聞こえるものもあった。
これは、それらの製品の周波数特性自体が、低域がフラットではない(つまり低域が減衰している) ため、
音源の過剰な低域ブーストが打ち消され、結果的に聴感上のバランスが良くなったと推測されます。
このことから、「フラットが正義」とされる理論とは裏腹に、
リスナーの満足度は、「音源の特性」と「再生機器(スピーカーやヘッドフォン)の特性」の
合成によって決まることが明確になります。
2. インピーダンスと駆動力の課題
さらに、この高性能イヤフォンの特性が、
さらに、この高性能イヤフォンの特性が、
再生機器側の駆動能力(アンプ) という別の課題を浮き彫りにしました。
低インピーダンスの特性:
この高性能イヤフォンは、一般的な3ヘッドフォンとは異なり、インピーダンスが低い。
駆動の必要性:
インピーダンスが低いイヤフォンまたはヘッドフォンの場合
出力インピーダンスが劇的に低い(または電流供給能力が高い)ヘッドフォンアンプが必要です。
出力インピーダンスが劇的に低い(または電流供給能力が高い)ヘッドフォンアンプが必要です。
写真のイヤフォンはインピーダンスが低い(17.5 Ω+-15 %)であるため、
一般的な機器のジャックに接続すると音は出るものの、
周波数特性に凹凸が生じ、音質が安定しません。
一般的な機器のジャックに接続すると音は出るものの、
周波数特性に凹凸が生じ、音質が安定しません。
一般的に、ヘッドホンアンプの出力インピーダンスは、
イヤホンまたはヘッドホンのインピーダンスの1/8以下が、
フラットにドライブできる目安とされています。
そのため、このイヤホンの場合、ドライブする機器の出力インピーダンスが2Ω以下でないと、
周波数特性に変動が生じ、公称値のフラットな特性を得ることができません。
色々なイヤフォンやヘッドフォンを試聴する場合で、
周波数特性に乱れを起こさないと考える場合
科学的に考えるのなら1Ω以下の出力インピーダンスのアンプが必要です。
ただしハイインピーダンスのイヤフォンまたはヘッドフォンを使用する場合
駆動する電流が流せるだけの出力が出せない機器の場合は、
ボリュームMAXでも小音量再生しかできない事が起こります。
結論の再確認
スピーカー再生、ヘッドフォン再生、どちらの検証においても、
スピーカー再生、ヘッドフォン再生、どちらの検証においても、
「フラット」という理想的な特性を追求することは、時に「聴きづらい音」を生み出すことが分かりました。
結局のところ、オーディオにおける最終的な「正解」は、
「自分のリスニング環境(部屋やアンプ、音源の特性)の中で、
自分が聴きやすいと感じるバランスにセッティングすること」であるという結論になりました。
動画は、低域フラットから少しレベルを下げていますが
それでも低域がバフバフ聞こえ不快です。
とんでもない事になると思われたマーカスミラーのベースは
おかしくないので面白い結果になりました。
高音質で視聴するための設定方法
空気録音の為、ヘッドフォンまたはイヤフォン使用でお願いします。
動画を再生後、右下のYouTubeロゴをクリックしてYouTubeへ移動してください。
動画の右下にある**⚙️(歯車)**マークをクリックします。
メニューから**「画質」**を選択します。
**「4K」**に変更してください。
高音質・高画質の動画をぜひお楽しみください。
以下余談 最近のメシ
営業さんから昼飯に誘われて ポークテキ定食
![IMG_3881[1].jpg](https://soundjulia.up.seesaa.net/image/IMG_38815B15D.jpg)
![IMG_3882[1].jpg](https://soundjulia.up.seesaa.net/image/IMG_38825B15D.jpg)
定休日に妻のお父さんを連れ出して山奥まで行って鮎を食しました。
とんでもなく美味かったです。
![IMG_3880[1].jpg](https://soundjulia.up.seesaa.net/image/IMG_38805B15D.jpg)
妻もかぶりついております。 載せたことはナイショです。(笑)
![IMG_3879[1].jpg](https://soundjulia.up.seesaa.net/image/IMG_38795B15D.jpg)


まったく同意します。
オーディオの難しいところは、その音源がどういう意図で、どんな環境で再生されることを想定して制作されたものか、
ユーザー側には知る方法がないことです。
私は長くmixerをしておりますが、
上記の想定は、クライアントが変われば、当然変わりますので、音源の数だけ、例えば周波数特性の傾向は異なるわけです。
以前は「原音再生」などという言葉が流行りましたが、原音が分からずに原音再生することは不可能です。
趣味は、自分を心地良くするのが、一番だと思いますので、固定観念に縛られず楽しむのが良いですね。
音源が耳に届く最終段階、つまりスピーカーやヘッドフォン、試聴環境(部屋)、そして音量といった要因で、各機器の特性や私たち自身の聴こえ方は常に変化します。
上流のデジタル機器やアンプの特性がいくらフラットで低歪みであったとしても、これらの要因と録音・マスタリングの違いが重なれば、聴き手の感じ方は多様になり、オーディオに「絶対的な結論」は出ないでしょう。
結局のところ、「自分が心地良い、良いと感じる再生音」こそが、その人にとっての「高音質」**になるのだと思います。今後とも、オーディオの奥深さを一緒に楽しんでいきましょう。